2013/05/20

マジメに「学生のうちにしかできないこと」を考えてみた。

就職活動を終えた友人が言った。
「残りの1年、学生のうちにしかできないことをやりたい」

じゃあ、一体それって何だ?
今からやろうとしていることは、ひょっとして卒業してからでもできるんじゃないか?
…というわけで表題。


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まず、
・大学生にしかできないこと
・今しかできないこと
この2つは明らかに違う

専門家の助言を受けて研究するのは大学生にしかできないけど、別に今じゃなくても就職してからお金を貯めて院に行けばできる。反対に、サークルの友人たちと一緒に1ヶ月のアメリカ横断旅行は大学生という立場じゃなくてもできる(家庭の事情で退学したメンバーを誘うことはできる!)けど、きっと今しかできない。


この2つはどちらが大事か、と聞かれると何とも言えない。会社を辞めて院に行く人が多いとは到底言えないからだ。だから単なるカテゴライズと割り切る。


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前者「大学生にしかできないこと」は、
・大学のリソースを活用する
・大学生という立場を利用する
という2つの区別ができる。

大学のリソースとは、授業システム、図書館や論文、高価な解析ソフト、指導教員の存在などを挙げることができる。簡単にまとめると「学びたい人が学べる環境」だ。社会人となった先輩方が口を揃えて言うように「もっと勉強しておけば良かった」と後悔するのを防ぐことができる。

大学生の立場とは、①「勉強のためにお話を聞きたいです」と言えば大抵の人が対応してくれる点、②長期間の休暇を活用できる点、③大学生限定のサービスを受けることができる点 ④学生同士の繋がりを活用できる点、などを挙げることができる。

①の場合、今のうちに会っておきたい人がいれば、勉強の名目で会うことができる(容易になる)。就職先でやりたい仕事があるのならこれはチャンスだ。例えば、出版社に勤めるとして、普通に考えたら斜陽産業だと言われている。しかし学生のうちにebookや電子コンテンツを扱うことに特化したIT分野のOBに話を伺えば、将来に活かせるかもしれない。なお、卒業後は勉強会・セミナーで代替することになると予想される。

②の場合、自動車免許の取得や中長期の海外滞在が例として挙げられる。親知らずの治療もできれば時間のあるうちに行うことが推奨される。一般的な日本企業だと、長期休暇を取得するのが難しいため、就労後にこれらを扱うのは容易ではない。実際には職場と相談しつつ長期休暇+有給で時間を作ることになるだろう。休職・転職を想定できるのであれば問題ないが、一般的とは言いがたい。

③の場合、国際交流や研修プログラム、コンペ、イベント事が当てはまる。学生以外は参加できないサービスは多々ある。もちろん社会人向けの代替サービスは少なからずあり、また企業によっては社内制度が充実しているだろう。ただ、それでも「知識・経験の乏しい学生向けに噛み砕かれたサービス」「多様な人材が混ざりやすい機会」という意味では、副次的な効果に乖離が見られるとしても不思議はない。あと学生団体とか。

④の場合、自分自身が学生であることによって、他の学生を巻き込むイベントやサービスを始めやすい利点がある。これは非常に大きい。現在、日本の代表的な資産家の中には、「大学在学中に学生向けの事業を行っていた」→「その事業を会社として法人化した」→「より一般向けのサービスにして大ヒットさせた」という実業家が少なからずリストアップされている。ジャパニーズドリームの可能性を捨てる意思決定は適当だろうか。


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後者「今しかできないこと」は、時間が経つに連れて状況が変化する場合に当てはまる。例えば、証券会社に勤務予定の学生が、服務規程で禁止される前に株で儲けておく、というのも当てはまるだろう。しかし、この例は、会社を辞めた後には株を再開できる、という意味で可逆的だ。そこで確実に不可逆と言えるケースを考えたい。

時間の経過によって変わるもの

(1)他者との関係性: 例えば、同じサークルのメンバーで会える機会は少ない。 再会には情報共有コスト、調整コスト、所帯を持つことによる行動制約、就労による行動制約が付きまとう。誰かが病気や怪我で亡くなった場合、現世では二度と会えない。そうなると親孝行も当てはまる。あと、恋人探しも学生のうちにやるべしとの意見が多い。

(2)肉体・精神・知的能力: 例えば、貧乏旅行を楽しめる体力・精神力は、年齢を重ねる毎に失われることが多い。若いうちはアジアやアフリカをバックパックして、老後にヨーロッパの町並みを巡りたい、という意見はしばしば耳にする。

(3)社会・経済・技術: 例えば、今はスマートフォンアプリの作成、販売が流行している。求人数が裏付けている通りだ。しかし20年後も同じ状況かと言われると、おそらく違うはずだ。アプリ開発に興味を持つ人が、今すぐに始めないのであれば、それは「老後に取っておく」のではなく「諦めた」ということになる。


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以上を踏まえると、学生にしかできないこと+今しかできないこと=学生のうちにしかできないこと、が見えてくる。一方で、今じゃなくても構わないこと、を後回しにすべきか、という問題(そもそもの前提への懐疑)は相変わらず残ることになる。

というのも自分の命がまさに不可逆だからだ。いつ死ぬか分からないので、重要なのは、明日死んでも「満足した人生だった」と言えるかどうか、という点ではないだろうか。したがって、やりたいときにやりたいことをやっておくのがベストだと個人的には考えている。

その上で、時間的非整合性の問題(= 後悔:やっておけば良かった − 満足:学生のうちにやっておいて良かった)を最小化できるように上記のポイントを踏まえて学生生活を設計すのが望ましいと思う。おわり。


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