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ふるさと投資ファンド―意欲のある中小企業が資金を得る仕組み (慶應義塾大学経済学部 現代金融論講座) 吉野 直行 塩澤 修平 嘉治 佐保子 慶應義塾大学出版会 2013-03-28 売り上げランキング : 342428 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
以下、内容の順序に従って要約とコメントを残しておく。
1−1:社会背景
・日本は海外に比べて現金保有率が高い
→個人資産の運用が不十分(所得が賃金のみに依存)
→投資を必要とする産業に資金が流れない
・日本を含めたアジア地域では、銀行+政策金融が主な金融の担い手
→ベンチャーキャピタルなどリスク資産への資金供給者が少ない
・日本は高齢化によって財政負担の増加が懸念される
→財政出動による産業への資金提供は期待すべきでない
・BIS規制によって銀行は安全資産に傾倒せざるを得ない
→中小+ベンチャーなどのリスクある企業に対する資金の担い手には成り得ない
1−2:ふるさと投資ファンド
・主な特徴は、借り手の顔が見えること
・寄付と組み合わせて利用されるケースも多い
・公的資金の部分的な注力も活用できる
→e.g. 資金比率が政府補助金:民間投資=40:60で、
民間にのみ配当を支払う場合、収益率は(100/60)に水増しされる
→結果として ①信用力増加 ②配当率増加 ③民間チェックによる事業効率化 に期待
→最適資本比率は ①民間収益率=国債利回り ②外部経済効果に応じた費用 のいずれか
→e.g. ②は、太陽光パネル設置事業による温室効果ガス削減効果などが該当
※この視点にやや疑問。政府(政策決定者)の立場や、金融資産+経済に関する社会的背景を読んだ後だと素晴らしい意見のように見えるが、家計のニーズと乖離しているような気もする。ポジショントークな印象。財政学・行政学・政治学・公共経済学・公共選択論あたりで分析すれば、政策決定による弊害(特定の事業が優先されることによる『政府の失敗』)が生じる懸念についても考えることはできそう。
・既存の投資信託の問題点
→銀行などの仲介会社は手数料の高い金融商品(≠高品質)を優先的に売りたがる
→最低限の固定手数料+配当連動の手数料、というモデルを模索すべき
→不透明性の最小化+仲介会社の目利きが重要。顔が見える金融を最大限に活用
※「マネオ」というソーシャルレンディングサービスでは、配当連動型の収益構造を提供しているため、この問題を解決しているらしい。裏付けを取っていないので、後日きちんと調べてから扱う。
1−3:資金供給者としての必要性
・アジアの借り手は困難に直面
→マイクロクレジットは高金利+ベンチャーキャピタルは絶対数が少ない。
→ 代替手段としてのふるさと投資ファンド。
※ベンチャーキャピタルの代替手段として考えるのであれば、なぜ日本ではベンチャーキャピタルが一般的ではないか、どのような問題があるのか、といった部分を調べておく必要はあるかもしれない。
・発展系としてインフラ投資信託の可能性(道路などのインフラ整備に資金を集める)
→長期資金の貸し手として、年金基金+個人年金+生命保険が期待される。
※個人年金を活用するという意味ではナイス。年金や生命保険が長期債券を中心に扱っていることを考えると、重要な視点だと思う。だけど私はそもそも現状の年金システムに対して批判的な意見を持っているので、やはりポジショントークさを感じてしまう。現状の財政システムを補完する活用方法=財政システムが変化すれば最適な活用法も変わる、わけなので、あまりこの部分を扱いたいとは思わないかなぁ。現時点では感情論だけど。
・質の担保が不十分だと日本人の投資嫌いが加速して事態は悪化。
→規制すべきは、①粗悪な事業対象への融資 ②投資家に損失を押し付ける事業者。
→優良企業の表彰も重要。複数の業者が自主的に監査委員会を設立すべき?
※ここも私の実感と違う。後述するが、ふるさと投資ファンドへの投資動機は、利潤動機と非利潤動機(=志ある投資)の2つに大別できる。特に後者の果たす役割が大きいと言う。実際、ReadyForやCampfireといったクラウドファンディングサービスを見ても、寄付に近い感情がメインだと読み取れる。だとすると、利潤動機を前提としたこれらの規制は(もちろん重要ではあるだろうけど)最重要論点ではないような気もする。正直ここは分からない。というか、どのような切り口から見るかで変わるのだろうけどさ。
軽くまとめるつもりだったけど、思った以上に長くなった。とりあえず1章終わり。
このペースだと参考文献を読破するのに到底間に合わないから少し巻きでいくかも。
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