2013/05/26

CF読書録01『ふるさと投資ファンド』を読んで③

引き続き、ふるさと投資ファンド―意欲のある中小企業が資金を得る仕組み (慶應義塾大学経済学部 現代金融論講座のレビュー。主にミュージックセキュリティ―ズ社の事例。


4−1:マイクロ投資スキーム
→音楽、酒蔵、途上国支援、農林業、スポーツ、被災地支援
→主要投資家は ①30-40代男性(57%)②会社員(34%)③東京都(22%)
 =インターネット利用層 × 資金的余裕?
→主な投資動機は、仕組みに共感したから(86%)や事業を応援したいから(72%)
→第二種金融商品取扱業者として調査、ファンド組成、営業者と個人を仲介+運用。
(e.g. 純米酒ファンドでのケースを用いて出資から償還の流れを例示)

※マイクロ投資、マイクロファイナンス(マイクロクレジット)、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ・ファンド、クラウドファンディングの違いを参考資料として提示している。ただ、日本の現状に即した区分けをしているため、今後エクイティ型のクラウドファンディングが参入するであろうことなどを考えると改良の余地あり?

4−2:活用事例
→音楽ファンド「HIPHOP LEGEND - 6」:平均利回りは+10.75%
→純米酒ファンド「奥播磨ファンド」:償還結果は+7.27%
→タオルファンド「風で織るタオルファンド」:償還結果は+4.18%
→林業ファンド「西粟倉村共有の森ファンド2009」:2019年償還予定

※社会的意義についてそれぞれ文化・環境に与える好ましいインパクトを解説していた。経済学でマクロ面を分析する場合は外部性を組み込んだモデルの構築が良いかも。ミクロ面であれば、投資家の意思決定に与える影響(非利潤動機)に関連すると推測される。

4−3:セキュリテ被災地応援ファンド
→1口10,000円=出資金5,000円(要返済)+寄付金5,000円(返済不要)
→鮮魚店、商店、食品会社:主に加工設備(機械・工場)の購入

※これらの活動は素晴らしいし、ぜひ応援したいが、今の私の興味分野ではないのだなと改めて。「災害金融を再考する」でも書いたけど、むしろ重要なのは復興面ではなく予防面への金融環境の整備だと思っている。私が被災当事者ではないから言えるのかもしれないけれど、こういうことを言うと不快に思う人がいるかもしれないけれど、もし今後、私が何らかの災害を被ると仮定すると、現時点においては、大切な人を失ってからのリカバリーに力を入れるよりも、大切な人を失わないための予防システムに力を入れたい。


5−1:マイクロファイナンス貧困削減投資ファンド
→債券投資:マイクロファイナンス機関(MIF)への貸付を行う投資ビークル(MIV)
→市場として機関数・顧客数は右上がり、MIVの資産成長率は19%
→流入金額のうち90%が大手機関150に、10%が中小機関9850に偏在

5−2:ミュージックセキュリティーズ社の事例
→日本個人が1口3万円融資、現地MIFに貸付、3年で返還+経営業績に応じて毎年分配
→特徴①:カンボジアとベトナムで中小規模のMIFに直接投資
→特徴②:個人からの小口投資、購入理由トップは仕組みに共感したから(71%)
→特徴③:人材育成、案件発掘、ファンド企画、レポート作成、広報は専門NPOに依存
→実績は、平均利回りが+5%くらい。計算式は省略。

※「顔の見える投資」として ①スタッフや顧客を写真付きで紹介 ②スタディーツアーで交流の場を設ける ③借り手を表彰するコンペを開催(受賞者を日本へ招く)といった工夫。一方で為替リスクを投資家が負っている。利潤動機だけで見ると投資家にとって魅力的とは言えないけど、定期預金+年金・保険だけで資産運用を行っている大多数の人にとっては、興味を持ちやすい+利回りも少しはあるので、魅力的な案件な気がする。


6−1、2、4:その他・補足
→クラブ財としての性質(e.g. 日本酒文化を出資者のみが共同消費)
→個人が適切な投資対象を見出すための取引コスト⇔「顔の見える投資」
→日本における個人の「リスク回避」的な意思決定⇔「志ある投資」
→投資家=消費者になりやすい:収益の現物支給
→他の金融商品との損益通算を可能にする(法的整備or個々の商品)

6−3:大企業投資との比較etc...
・経済面での課題
→多様性(特に新興企業の審査は既存の金融機関では困難)
→情報収集(財務諸表などのデータが量・質ともに不十分)
→小規模性(融資額に対して審査・調査費用が過大)

・法律面での課題

・政府系金融機関
→中小企業への資金供給を補完する役割
→近年は量的補完から質的補完へシフト(民間金融では負えないリスクの負担)
→ただし、国民の財産を運用=安全性重視という基本姿勢と矛盾

・経営/技術の支援
→中小企業技術革新制度、ビジネスインキュベーターなど

・情報収集インフラの整備
→公共財、クラブ財の性質が該当
→逆選択(優良企業が相対的に低評価となる状況)を回避する必要
→審査費用の低下による投資拡大=資金配分の増加=GDP、社会厚生の増加


以上。完全にメモになってしまった。読んだ人でなければ理解できないですよねぇ。
もう少しレビューっぽく書くべきだったか。ただ、ある程度は論点を網羅できたはず。
なので、今後同じ論点が出てきたときには省略可能になると思われます。
したがって、もう少し分かりやすい書き方ができるようになる…はず。

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