2013/05/06

なぜ債券の価格と利回りは反対方向に動くか。

某カフェにて「国債の値段が上がると利子率は下がる」と繰返し呟いて覚えている学生さんたちがいました。1人が「でも何で逆になるの?」と問いかけました。他の人は「さぁ?」と首を傾げました。

確かに、『分かりやすい経済の本』といったタイトルの書籍や、普段のニュースに目を通すと「債券価格と利回りは反対方向に動きますよ」と断定しているものの、その理由まで説明しているものは多くありません。きちんとしたファイナンスの教科書を読めば一発で分かるのですが、そこまで本気で勉強したくねーよ!という人が大多数だと思います。

そこで、本日は、数式をなるべく使わず、直感的に理解できるよう説明します。分かりやすさ重視なので厳密な説明ではありません。時点間の割引なども(本来は一番重要な部分ですが)完全無視で話を進めます。



まず、そもそも債券とは何ぞや、という点について。あえてざっくり言ってしまうと、借金の証書です。国や地方自治体、または企業が借金をするときに「何日までに何円を返します」と約束します。このとき、例えば「10年後に100万円を返す」とか「10年間に渡って半年ごとに5万円ずつ返す」とか、そういった約束を行います。

このとき、貸すお金は100万円以下です。なぜなら、100万円を貸して10年間待ったのに、返ってくるのが同じ100万円だと明らかに損だからです。その10年間で他のビジネスに回せばもっと稼げるし、借金が返済されないリスクだってあるからです。なので基本的には、例えば80万円を貸すと、10年後には100万円で返ってくる、といった形になります。

実際にどうやって借金をするのかというと、「10年後に100万円で返しますよ」と記入された債券(国公債・社債)を発行して売りつけます。これが欲しい人は50万円なり60万円なりを提示して買い取るわけです。

さて、一度買い取った債券ですが、バカ正直に10年間を保持し続ける必要はありません(もちろん持ち続ける作戦もあります)。例えば、40万円で買ったあと、他に欲しい人がいれば60万円で売りつけることだってできるわけです。そして最終的に「借金を返済する日」にその証書である債券を保有している人に対して、掲載されている金額が支給(返済)される、ということになります。

では、もしあなたが債券を買うのであれば、買い取り価格は安い方がいいですか?それとも高い方がいいですか?



10年後に貰える金額(100万円)は変化しません。額面に記載されている通りです。ですが、あなたが誰かからその債券を買い取るときの価格は変化します。つまり、60万円で買い取るよりも40万円で買い取る方がお得ということになります。

もっと分かりやすく言うなら、宝くじをイメージして下さい。ある貧乏人が100万円の当たりくじを手に入れました。現金と引き換えできるのは1週間後です。しかし、貧乏人は今すぐお金が必要です。そこであなたに対して交渉しました。100万円の当たりくじをあげるから、代わりに今すぐ現金を欲しい、と。このとき、あなたは40万円を手渡すのと60万円を手渡すのとどちらがお得でしょうか。当然、40万円の方がお得です。

なぜなら、

(収入)100万円 ー (費用)60万円 = (利益)40万円
(収入)100万円 ー (費用)40万円 = (利益)60万円

となり、
費用が少ない方が利益が大きくなるからです。

これと同じで、10年後に100万円を貰える債券についても、債券価格が40万円のときの方が、60万円のときよりも利益が大きくなります。この「どれだけ利益が大きくなるか」を示す割合を「債券の利回り」として計算するのです。実際にはもう少しきちんとした計算式を使いますが…。



さて、もうお分かりでしょう!

債券は将来貰えるお金(額面価値)が一定なので、買い取るときの「価格が小さい」ほうが、相対的にお得=「利回りが大きい」ことになるのです。当然、逆も同じように、買い取るときの「価格が大きい」ほうが、相対的に損=「利回りが小さい」ことになります。

その結果、債券価格と利回りは反対方向に動く、と言われているのです。
結構分かりやすく説明したつもりなのですがいかがでしょうか。

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