引き続き、ふるさと投資ファンド―意欲のある中小企業が資金を得る仕組み (慶應義塾大学経済学部 現代金融論講座のレビュー。
2−1:日本の金融システム
・銀行預金、公債および財政投融資に傾倒
→BIS規制や財政難によって現状のシステムでは不十分=市場部門による補完が必要
→国内個人資産(1400兆円)× 国内資金循環 の活性化が不可欠
→地域金融機関を活用したまちづくり資金の地産地消に期待
2−2:不動産・インフラ
・不動産は2300兆円ストック > 証券化されているのは33兆円のみ
→証券化による資金供給 ⇒ 3-4割に改築の必要性(e.g. 耐震基準、都市の機能更新)
→地方の収益不動産に期待 ⇔ リーマンショックによる回避
→公共インフラ(空港、道路、学校、病院)への民間資金活用:レベニュー債
※別のエントリーできちんと書くつもりだが、空港に複数の個人が少額ずつ投資する(いわばクラウドファンディング)の事例は地方でいくつか見られる。
2−3:ふるさと投資
・ふるさと投資(地域活性化小口投資)
→間接金融部門、市場部門の外側に新たな資金媒介経路を作る
特徴①:金融機関のバランスシートを経由せず「リスク許容度特性」「個人の志」に依存
特徴②:匿名組合出資の形態=投資先事業者の経営の自立性に配慮
特徴③:個人が投資を通じて消費者(ファン)に転化しやすい=潜在顧客の獲得
※リスク許容度特性とは、元本保証・有期性を有する銀行と違って保守運用・短期にとらわれない性質を意味する。「個人の志」とかそういう曖昧な言葉はやめてほしいんですけど、要は金銭リターンの大小にとらわれず、事業への共感度合いが投資決定の要因として機能することです。
※③はクラウドファンディングで重要なポイントの1つ。最近話題のゲームやアニメはまさにこれですよね。この商品が出るなら買いたい、という人たちが資金を持ち寄って、一定以上の金額になれば生産を行う形式のサービスは多々あります。グルーポンのような共同購入と、昔ながらの受注生産とが組合わさった形。
・ふるさと投資の課題
→①上:認知度の向上
→①下:他の金融商品と比較した税制面等におけるイコールフッティングの確保
→②投資家保護の為に規制環境整備(情報開示フォーマット、悪質業者排除、苦情受付)
→③投資家の利便性向上( ITスキルの低い人への配慮、地域投資での税制優遇)
→④事業者サイドのメリット向上
→⑤地域金融機関を含む優良な新規業者参入の促進
・インフラファイナンス
→酒造ファンドは原料(酒米) 向けが主流⇔被災地では酒蔵への投資が必要
→「事業投資」+「施設/不動産への出資」という複合スキームの検討
※本書の図「金融システムの将来像」が参考になるかも。レベニュー債、カバードボンド、ノンリコースローン、PFI、メザニン資金あたりの詳細と枠組み内での機能はまだきちんと理解していないので後で個別に調べる。
3−1:復興まちづくり(東日本大震災後の石巻のケース)
・ 政府による金融面の対応
→産業復興機構:二重債務問題を回避するために債券を買い取り
→東日本大震災事業者再生支援機構:政府保証付き資金借入を補助
→中小企業再生支援協議会:(省略)
→復興特区支援利子補給制度:指定金融機関から対象事業への貸付にかかる利子を補給
→危機対応融資:日本政策金融公庫から中堅大企業向けに支援
・民間による金融面の対応:復興ファンド
→分類:①助成型、②投資型、③融資型
→支援対象:⑴生活基盤系、⑵事業系、⑶ソーシャルビジネス系
→支援分野:ソーシャル・コミュニティビジネス型、新産業創出ベンチャー型、まちづくり型、事業再生型など
※この分け方どうなんでしょう。具体例が少ないのでちょっと…
・ミュージックセキュリティーズ社:セキュリテ被災地応援ファンド
→機能:助成と投資のハイブリッド(1本あたり700万〜1億円のエクイティ)
→スピード:発災後2ヶ月足らずで募集開始。現在23,000人が計10億を34本に投資。
※後述。この会社の事例はかなり興味深い。
・石巻復興まちづくりプロジェクト
→課題:①津波対策、②「働く場」の創出、③住まい+コミュニティの維持
→商店&小売業の回帰や新規立地を速やかに勧めたい
→小口、小規模でもスピードが要求される資金調達=ふるさと投資の活用が効果的
※割愛したけど、「歴史的な街並み・美しい景観を目指す、まちのデザインコード」や「地方における豊かなライフスタイルのブランド化」みたいなことが語られていた。言っていることは分かるし、共感する人も多いのだろうけど、美徳の押しつけというか「市民の暮らし」ってもっと泥臭いものじゃない?と思ってしまったりもする。価値観や立場によって大きく意見が変わるテーマだと思うので、正直、震災について扱うのはなるべく避けたい。答えが千差万別すぎる。
3−2:國酒プロジェクト
・日本酒や焼酎(國酒)=日本らしさの結晶
→国内:消費量が縮小、酒蔵の数が減少
→海外:人口増加、途上国の経済成長、日本食ブームで市場として可能性大
→政府、各自治体による市場開拓の支援(地域発グローバルマーケティング)
→資金調達支援策として、ふるさと投資ファンドの活用は有益
→ミュージックセキュリティーズ社の先行事例
⇔個人投資:酒類業者が情報公開(=顔の見える投資)も有用
※私の理解不足だとしたら失礼なことを言うようだけど、これは100%民間でやるべきことではないのでしょうか。文化保護の観点(酒蔵など)で見たら税金を投入すべき、という議論は分かるのだけど、その際にも、コストベネフィット分析を行った上で政策を定めるべきだと思うのですが。いや、だって、これが認められてしまったら、同じ理屈で、グローバル化に対応できていない、あらゆる国内産業が…。
思った以上に長くなった。次が多分ラスト。
前回エントリーを読んで思ったけど完全にメモになってしまっているね。
もう少し私の知識が付いたら分かりやすいまとめ記事を書きたいものです。
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