2014/07/05

新規サービス開発について学んだこと(1)企画

社畜生活の中で実践とインプットを繰り返しているので、ざっくりまとめます。Webサービス系の事業開発をどう進めていくか、そのために何が必要なのかという内容。全てが必須ではないし、ケースバイケースですが、思考の補助として参考になれば幸いです。

ただ、私自身がきちんとした知識・経験を有しているとは言い難いので、あくまでも現状で示すことができるMAXです。痛くて恥ずかしいミスをしているかもしれません。学習に合わせて加筆・修正を重ねるつもりです。

不十分な点があればご指摘いただけると幸いです。内容に限らず、文章が分かりにくいといったことでも結構です。Twitter(@yuzutas0)、Facebook、LINE、コメント欄、ブコメ、メール、直接会ったときなど、どんなツール・タイミングでも歓迎です。


アウトライン 1. 企画 ←いまここ
2. 環境構築
3. モック
4. 開発
5. 運用
6. グロース+その他


1. 企画(何をやるか)

1-1. 注目ポイント①:十分な市場があるか?

  *各種メディアやインタビュー記事で、市場動向は把握できる。
    *年末年始に日経新聞や東洋経済が出している雑誌の特集は分かりやすい。
    *スタートアップ企業のピッチや、流行サービスのネット記事も参考になる。
    *その他、カンファレンス/研究報告書/アナリストのコメントなど。

  *『ハイ・コンセプト』は、21世紀のマーケットチャンスを大まかに分類している。
    *物に溢れた時代:機能だけでなく、体験/意義/ストーリー性/人間関係に価値。
      *一方、まだ物不足の地域や人々もいる。そこでBOPといった観点が登場。
    *機械が人の仕事を奪う:共感や遊び心は人間にしかできない。
      *一方、ツールが定着しないケースも多い。機械を作るのもチャンス。
    *専門知識のコモディティ化:全体最適を判断できることが求められる。
      *例:優秀な医師は、知識量ではなく、患者の生活全体を踏まえた治療。
      *例:昔はその病気を治せるだけで価値だった。
      *一方:希少疾患の治療薬など、コモディティ化されていない知識は価値。

  *最終的には単なる計算。
    *市場シェアと顧客単価から参考となる利益を概算する。
      *大企業での新規事業立ち上げでは重視されている気がする。
      *ベンチャーでは後述のペルソナ/課題ベースが優遇される風潮かも。


1-2. 注目ポイント②:ターゲットと問題は明確か?

  *誰にソリューションを届けるのか。
    *具体的な人をイメージできるようにペルソナを特定する。
      *迷ったときはペルソナを踏まえて判断する。
      *例:2つのデザインのうち、この人はどっちを好むか?と問いかける。
    *具体的な手法は文献参照。
      *『UXデザイン入門
        *調査:エスノグラフィー/インタビュー/観察/日記調査。
        *モデリング:行動変数/データマッピング/セグメント分け/文書化。
      *『スタートアップ・マニュアル
        *デモグラフィック/サイコグラフィックを明示して文書化。
        *その人はどんな1日を送っているのか?
    *自分自身や身近な人の方が成功確率が高い。
      *ターゲットの特徴や背景を正確に把握できる。
      *調査や仮説検証を行いやすい。知らない人に頼むのはハードルが高い。
      *実際のソリューションを提供する際に、最初の利用者となってくれる。
  
  *その人はどんな問題を抱えているのか。
    *問題に遭遇してから対処するまでのストーリーを把握する。
      *本気で対処していない問題は、そもそも解決する価値がない。
        *「あったらいいな」ではなく「なければ困る」を狙う。
        *「こんなサービスあったら面白そう」だと、結局使われない。 
      *参考:上記『スタートアップ・マニュアル』の課題認識度指標。
        *課題がある<課題を自覚<解決策を模索<自前の解決策を既に保有。
    *具体的な手法は文献参照。
      *参考:上記『UXデザイン入門』や『スタートアップ・マニュアル
      *参考:『Running Lean』の構造化インタビュー技法。
    *普段の生活の中で「誰がどんな問題を抱えているか」をメモすると良いかも。
      *例:新婚の友人と会話。
      *発見:夫婦の起床時間が違うとアラーム利用に抵抗感=問題。

  *注意:ストーリーに別の人間が登場する場合。
    *実際にソリューションを利用するときには人間関係が鍵になる。
      *例:業務ツール:導入を決める人/予算を決める人/実際に使う人は別。
      *例:動画の共同編集:発案者/面倒臭がり/PCに疎い人で使い方が違う。
      *例:子供の受験教材:意思決定は母親/予算は父親/利用者は子供。
    *全関係者のペルソナを定める。
      *参考:上記『UXデザイン入門
      *3種類のペルソナ:主役/脇役/黒衣。
    *人間関係図(組織図・顧客相関図)を書く。
      *参考:上記『スタートアップ・マニュアル
      *営業ロードマップ
        *どの順番にどんな営業をすれば、サービスを使ってもらえるか。
      * 顧客アーキタイプ
        *意思決定者/予算管理者/リコメンダ/インフルエンサ/エンドユーザ
      *顧客タイプ
        *初期評価者/エバンジェリスト/拡大期顧客/メインストリーム
        *これらに加えてアーリーアダプター。
          *不完全でもソリューションに価値を感じる顧客のこと。          *初期評価者(新技術に触れたいだけの人)より献身的。
          *エバンジェリスト(製品を広めてくれる人)より消極的。
          *参考:『リーン・スタートアップ
    *影響関係を図示する。
      *参考:『ビジネスモデル・ジェネレーション ワークブック
      *共感マップ
        *各ペルソナごとに作成。
        *インプット:外部から見たもの/聞いたもの。
        *アウトプット:外部に対する言動/態度。
        *影響結果:思考/感情⇒不(Pain)と欲(Gain)の発生・解消。
        *各ペルソナ間で、情報のやり取りと影響結果を図示。

  *その問題はどのように発生しているのか。
    *問題構造を分析する。
      *いわゆる科学的な思考体系があると良いかも。
        *学生時代の専門分野を初めとして、論文を読むと良いかも。
        *特定の問題の構造解説がなされている。
        *先行研究の要約として、解決アプローチが列挙されている。
        *私の場合はミクロ経済学を応用すると分析しやすいです。
      *色々なサービスを知る。
        *「誰の、どんな問題を、どう解決しているのか」に注目する。
      *普段から思考するクセをつける。
        *困ったことが起きたら最適解と再発防止策を模索する。
        *その過程で問題を分析する。
    *問題構造のどこをどう変えれば解決するか当たりをつける。
      *解決策に落とし込むには思考の飛躍が欲しいかも。
      *原則:新しいアイデアは、既存のアイデアの結合によって生まれる。
        *手法としては、いわゆるブレーンストーミングやKJ法。
        *さまざまなアイデアの引き出しを蓄えておいてそこから引き出す。


1-3. 注目ポイント③:競合はどうなっているか?

  *競合や既存の解決策が見つからない場合。
    *競合の捉え方が間違っているケース:誰の何が課題かを元にきちんと探す。
    *そもそも解決する価値がないケース:企画は却下。
    *解決したくても上手く解決できていないケース:理由を分析する。

  *既存の解決策・活動を置き換えるよう意識する。
    *ターゲットが時間やお金を費やすに値するサービスを作りたい。
      *「あったらいいな」ではなく「なければ困る」を狙う。
      *なければ困るのだから、ターゲットは何らかの対処法を既に持っている。
      *しかし、その対処法は完全ではないかもしれない。
      *だから、そこを置き換えるサービスを提供する。
    *最終的にはユーザーが時間を費やしたりお金を払うことになる。
      *そのお金や時間をどこから捻出してもらうのか。何を捨ててもらうのか。
      *前の解決策から新しい解決策に引っ越しをしてもらうのがスマート。

  *どのように既存の解決策を置き換えるか。
    *使いにくさ(Pain)を解決するか、良い点(Gain)をさらに伸ばす。
      *参考:『Value Proposition Canvasとは何か
        *例:語学力を付けたいという課題。解決策は英会話学校。
        *Pain:英会話学校に通うのは大変。授業日時が固定で、生活に支障。
        *Replace:融通の効く時間設定ができれば良い⇒Skype英会話。
    *既存サービスに対して勝てそうな要素を探す。
      *参考:『ビジネスモデル・ジェネレーション』Business Model Canvas。
      *既存のソリューションがどのようなビジネスモデルなのか要素分解する。
      *9つの要素:顧客/関係/チャネル/解決/問題/パートナー/資源/収入/支出。
        *例:英会話学校。
        *Cost, Partner:日本国内だと外国人講師を雇うための人件費が高い。        *Replace:フィリピンなら人件費を抑えられる⇒Skype英会話。
      *1つでも要素を変えること=イノベーション。
        *参考『イノベーションのジレンマ
          *持続的イノベーション:業務最適化やツール導入による支出削減。
          *破壊的イノベーション:Skype英会話という解決モデル。

  *置き換えではなく模倣という手も……。
    *全く同じサービスを別の国や地域で行う(=クローン市場)。
      *Business Model Canvasの要素「顧客」を変える。
      *顧客の違い=文化や背景の違いに伴って、他の要素も調整する。
    *レッドオーシャン市場で戦う。
      *顧客フォローや丁寧な説明など、ちょっとした点で差別化する。
      *1人1人に対して最適化されたサービスを提供する。
    *自分の成功体験をベースにしてサービス化する。
      *例:友人に地元の美味しい料理屋を紹介した⇒地元民による紹介サイト。
      *例:文書管理のために自動化スクリプトを作る⇒業務ツールとして販売。
    *注意:他の地域も/他の人も、その問題を解決したいと思っているか。


1-4. 競合の補足:問題解決型、文化創出型、習慣型。

  *既存の活動(job)を置き換えるのが問題解決型サービス。
    *より良い解決方法があるなら、人間はそちらを利用する。
    *例:「速い馬が欲しい」=「速く移動したい」⇒ 自動車の発明・普及。

  *映画やTV番組、ニコニコ動画といったサービスは文化創出型と言える。
    *問題/解決の対応や置き換えが見えにくい。
    *歴史的な文脈のもとで置き換えが起きている。
      *舞台での演劇(日時・場所が限定されてしまう)
      *映画館での映画鑑賞(日時・場所をクリア/周りが騒がしい)
      *自宅でのDVD鑑賞(プライベートを確保/人と共有したい)
      *ニコニコ動画(コンテンツを軸とした独自の盛り上がり)
    *文化や芸術、スポーツやエンターテイメントには歴史の流れがある。
      *興味のある分野を概観する書籍を読むと勉強になるかも。
      *メディア論や文化史といった人文科学で分析されている。
      *その分野の専門家/マニアは課題意識と改善アイデアを持っている。
 
  *ゲームやSNSのように、ついつい使ってしまう習慣型サービスもある。
    *見えにくいが、問題解決の構造は存在する。
      *例:Twitterではリアルの寂しさをオンライン交流で紛らわせる。
      *参考:『ツイッター創業物語
    *問題解決の価値ではなく、習慣化の構造による成功が大きい。
      *参考:『Hooked』(未読・読んだら追記)
    *時間の観点では置き換えが起きている。
      *あるサイトやアプリをついつい開いてしまう。時間を費やしている。
      *時間を費やす対象が置き換わる。
        *例:mixiを開かなくなる代わりにFacebookを見る時間が増えた。
      *競合分析をもとにGain/Painを読み解けば、理屈は説明できる。
        *mixiで余計な機能がユーザー体験を害した…とか。
        *競合ベース、各論によるところが大きい。


1-5. 市場、ペルソナ/問題、競合分析の順番について

  *大企業は、市場を見てから小さく落とし込む傾向がある。
    *既存事業との親和性に価値を置くことがある。
    *始める前から「市場が小さそう」という理由で棄却することがある。
      *企画を通すために準備できることは全て準備する。
      *社内政治や準備のために非効率な時間を費やしてしまう懸念。

  *スタートアップとしては、ターゲット・問題から始めるのが望ましい。
    *まず問題の重要性について検証⇒解決策がきちんと機能するかを検証する。
    *検証の過程でどんどんビジネスプランは変わっていく。
    *最終的なプランについて、将来的に市場を獲得できるか検討する。
      *プラン自体が変わるので、最初から市場を見てもあまり意味がない。
      *何らかのリソース・強みを持っているなら市場ベースでもいいかも。
    *検証を終えた後で「市場が小さいから却下」という結論に至る悲劇。

  *競合分析は順序に関係なく重要。
    *他サービス:市場を理解するための足掛かりになる。
    *既存の解決策:問題を理解するための足掛かりになる。
    *文化創出型:歴史の流れから次のヒットを予測する。
    *習慣型:いま時間を費やしているものを置き換える。


1-6. アイデアを見える化する

  *取り組もうとしている事業をリーンキャンバスに記述する。
    *9つの要素:顧客/問題/解決策/チャネル/独自価値/計測指標/優位性/支出/収入
      *複数アイデアがあるときは複数を書く。
      *複数のユーザーで成り立つマルチサイドサービスの場合は全員分を書く。
      *なるべくシンプルに書く。複雑だと顧客や仲間にさえ理解されない。 
    *キャンバスは更新・修正されていく。
      *n周目の1枚目:事業モデルをまとめる。
      *n周目の2枚目:根拠となる要素の仮説を詰める。
      *n周目の3枚目:仮説を検証して結果を反映させる。
      *n+1周目の1枚目:新たな情報を元に練り直した事業モデル。
      *n+1周目の……。
    *参考:上記『Running Lean

  *早い段階で検証できるものは検証しておく。
    *上記インタビュー等で顧客/課題の検証はできている状態だと望ましい。
    *解決策の方向性を検証するためにWebを利用すると早い。
      *例:ブログにアイデアを書いてみる。興味を持ってくれる人はいるか。
      *例:AdsenseやFacebook広告を出稿する。クリックする人はいるか。
      *例:ランディングページを公開する。メールを登録する人はいるか。
    *参考:上記『リーンスタートアップ』の仮説検証サイクル。
      *何を検証するか(仮説)=キャンバスの要素。
      *どうやって検証するか(構築)=サービス開発もここに入る。
      *結果はどうだったか(計測)
    *プロトタイプがないと検証できない要素が残る。
      *「MVP:検証のために必要な最小機能の製品」を開発する。
    *まずは全ての仮説検証を終えることを目指す。
      *その過程で実際のサービスをどんどん改善していく。
      *その過程で実際のユーザーや売上を獲得していく。
      *実際に使われるか、収益を得られるか、実践の中で検証する。


⇒「2. 環境構築」に続く。

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