2012/11/16

インタビュー:新興国の「個人向け金融」を訪ねて



東南アジアを初めとする新興国で、給与上昇によって中間層が増加していることを背景に、個人向け金融サービスが活発になっているようです。そこで、リアルな情報を得るために、現地の方々にお話を伺ってみました。



もくじ
・日本での報道
・インドネシア新聞社の方へインタビュー
・各新興国の方々の言葉







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●日本での報道


日経新聞(2012.10.08)によると、



・SMBCコンシューマーファイナンスは中国での無担保ローンを展開。
(市場:中国全体での小口融資残高は2010年末より2.5倍)

・セディナはベトナムで自動車ローンを始める。
(市場:公共交通機関が少ないため、自動車への需要が大きい)

・JCBはベトナムやバングラデシュなどでクレジットカードを発行。
(市場:オセアニア+アジアだけでも2015年には10年比で1.5倍になると予想)

via『個人向け金融 新興国へ 中間層増え利用急増


と、東南アジアなどの新興国で個人向け金融サービスが増加しているようです。




とは言うものの、私が実際にアジアをぶらりと歩いた感じではあまり金融分野の発展を感じることはできなかったので、各国現地の事情に詳しい方々にお話を伺ってみました。





●インドネシア新聞社の方へインタビュー



『じゃかるた新聞』営業部 森裕介
http://www.jakartashimbun.com/


――アジアでの個人向け金融が盛り上がっていますが、インドネシアではどうでしょうか。

非常に増えていますね。特にインドネシアで最も話題なのが、二輪と四輪の販売台数の多さです。これはローンで買わせて伸ばしているという側面も強いです。

今年の5月までは少額の頭金で買えたのですが、事実上ないも同然の金額だったため、さすがにやりすぎということで頭金規制が6月に始まりました。


――返済トラブルが多発していたわけですね。

その通りです。10万円くらいのバイクを買うのに、頭金5千円と言えばイメージできるでしょうか。2-3ヶ月ほど乗り回した後、返済できないから没収される、といったケースが多発していました。

6月の規制はひとことで言えば金融セクターの健全性維持のためです。無審査に近いローンで、頭金がほとんどない状態でも、各社が競って貸し出していた。当然ですが、焦げ付くに決まっています。


――個人向け金融ではクレジットカードも成長市場ですね。

手前味噌ではありますが『じゃかるた新聞』の記事でも取り上げております。

「インドネシア・クレジットカード協会(AKKI)によると、今年1―8月の総取引額は前年同期比11%増の133 兆2100億ルピア(約1兆1千億円)を記録した。クレジットカード登録枚数は8月末時点で1500万枚に達し、 年間で1割増のペースで増加している。」

一人当たりGDPが3000ドルを超えると消費が加速すると言われています。まさにその加速が始まりつつある状態でしょうね。


――クレジットカードの手続きや利用法は日本人と似ているのでしょうか。

日本とは違い、カルフールやスーパーで顧客に作らせているのをよく見かけます。主なターゲットとしては月収3~5万円より上の中間層が使っているように思います。貯蓄をしない上に計画性のないインドネシア人マインドを考えると焦げ付き続出が懸念されます。


――何か政府は対策を行っていないのでしょうか。

もちろん、放置をしているわけではありません。今年3月にはカード保有に関する新規定を発出しました。

1:カード保有者の年齢制限を、現行十七歳以上から二十一歳以上に引き上げる。

2:クレジットカード取得の最低月収を三百万ルピアとする。

3:月収三百万ルピアから千万ルピアでクレジットカードを二枚持つことができる。

4:利用限度額を月収の約三倍までとする。

5:月三・五―三・七五%を基準に、クレジットカードの手数料金利の通常計算である複利の禁止。

といった規制です。

インドネシアを初めとして新興国では、経済成長と同時に多くの問題が健在化しています。政府が適切な規制を行うことで人々の生活がより良い方向に向かうことが重要です。






●各新興国の方々の言葉


ーー中国について

最初の予想では、所得が上昇していて金融サービスもバンバン使っているイメージでした。ところが現地の学生にfacebook経由で話を伺ったところ「若年層の給料はそこまで高くないよ」とのこと。おそらく競争社会を勝ち続けた一部のサラリーマンが中間層としての地位を得ているのではないでしょうか。


ーーベトナムについて

インフレの沈静化によって再び成長を始めたため、金融に限らず非常に多くの企業が乗り込んでいる模様です。現地在住、HRインスティチュートの川村泰裕さん曰く「クレジットカードが使える店は増えた印象」とのこと。


ーーバングラデシュについて


skypeでグラミン銀行のMaruf氏に話を伺ったところ、バングラは年6%の成長を続けており、2021年までにはMiddle Level Countryに到達することを目指しているとのこと。したがって、クレジットカードを初めとする個人向け金融サービスの需給ともに増加が見込まれている。

ただ、akanat(株)代表の田中秀喜さん曰く「クレジットカードの普及率はここ数年上がっているものの、使える場所はダッカほか主要都市部に限られている。まだ超一流企業の役員レベルぐらいまでが持っている印象。ボーダーは月に10万円貰っているかぐらいに思っています」とのこと。

また、

・カード会社はVisaが多い。
・一度撤退したアメックスがcity bank(※citiとは別)と提携して戻って来たのが約三年前。
・JICAのシニアオフィサーが月10万円くらい。
・ただ、携帯電話会社の新入社員が月10万いくという噂もある。
・カード決済は掛け商売=資金の回転率が落ちることから、やりたくない店が多いと予想される。

とのことです。

つまり、まずは限られたお店で役員級の方々が使う→カード所有者が増えていく→導入店舗が増えていく、という流れになるのではないでしょうか。





情報提供にご協力いただいた方々、誠にありがとうございました。

記事や統計から学べることが多いのと同じように、リアルな生活から読み取れることも沢山あるわけですね。私が放浪してた期間なんてたかがしれているのだな、と思い知らされました。ちょっと、これはアレですね、時間があれば3ヶ月くらい住み込みで現地を視察したい気分です。

それにしても新興国の経済は面白いっす。アジアでビジネスをやっている方々が、皆さん輝いていて羨ましいですね。機会があればアジア就職・起業に関するインタビュー記事なんかも載せたいかも。

終わり。

⇒関連:新興国在住の方々にお話を伺った。
http://togetter.com/li/407865

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