2012/11/04

ゆずたそ流 "吉野ゼミ" 攻略ガイド・上

論文が一区切りついた記念に、ゼミをPRしておこうと思います。
というわけで以下、独断と偏見に基づく吉野ゼミガイドです。

対象:
慶應義塾大学の1-2年生で入ゼミを考えてる方(主に経済学部)

紹介するゼミ:
吉野直行研究会(金融・計量経済・マクロ)
http://seminar.econ.keio.ac.jp/yoshino/indexnew.html



内容  ①どんなことを学んでいるか ← here!!
 ②教授はどんな人か
 ③学生はどんな人たちか
 ④ゼミを決めるにあたって
 ⑤入ゼミ試験に向けて



【1:どんなことを学んでいるか】

●経済指標

いわゆる株価とか為替を分析します。ニュースから経済の動きが分かるようになるので、世の中を見る力を養いたいという方には勉強になるはずです。

例えば、本日11月1日は国内の株価が上がりました。しかし、4-9月期の業績発表では「予想していたよりヤバいっすわ!」という会社が多い。なぜ業績が悪いのに株が上がっているのでしょうか。


答えの1つは、中国経済が回復しているからです(他にも要因はあります)。1日に中国製造業PMIという指標が発表され、経済が改善されつつあることが分かりました。なぜ中国経済の回復によって日本の株価が上がるかと言うと、

①中国と取引している輸出企業の業績がこれから改善していくから
②中国に工場がある企業の業績がこれから改善していくから
③中国への投資が増えて、相対的に日本への投資が減るので、日本円が円高から円安方向に向かうから(円安だと輸出産業の業績が良くなる)

しばしば「中国の経済が熱い!」と言われますが、その一方で、一人っ子政策による少子高齢化問題、地方と都市部の格差、人民元の為替レートといった政治・社会問題も多々あり、経済の失速として現れていたのです。


こういった指標・ニュースから社会を読み解く、というのを、担当を交代しつつ毎週やっています。1つ1つの発表は聴く方も話す方も作業ゲーなんですけど、これをコツコツ続けると自然と力がついていくとか。

というわけで少し前からひっそりと自分でも続けてます→
経済日記 (id:yuzutas0 / @yuzutas0) http://d.hatena.ne.jp/yuzutas0/



●輪読

教科書を輪読します。経済指標や論文に必要な知識を吸収するために、海外の分厚い教科書を、毎週読みます。意外と分量あります。んで、その週の担当者が内容をレジュメにまとめて解説します。

主に「計量経済学」「国際マクロ経済学」「金融論」あたりがメイン。ただし、ミクロ経済学の応用や企業・個人のファイナンス理論も使うので他の授業や自習で補っておいたほうがいいかもしれません。

ちなみに私はこの輪読が一番嫌いです。日本語でポイントだけ解説した参考書で手早く学ぶほうが効率的だと思ってるからです。基礎知識を付けて議論を重ねる→分厚いテキスト、の順序が一番吸収率が良いと思うんですけどね。まぁ、英語に触れる・経済学に触れる絶対量を増やしたい学徒には最高に向いていると思います。やればやるだけ実力が身に付くのは間違いないので。



●サブゼミ

まず、3年前期は計量分析を学生たちだけで勉強します。論文を書くに当たってデータの裏付けが必要となるので、その扱いに慣れるためですね。教授はかなり数字にこだわるので、定量的な視点を獲得したい人にも向いていると思います。

定量的な視点って何ぞや、という方。日本の未来について考えてみて下さい。少子化ですよね、高齢化ですよね、人口は減っていきますよね、税(収入)は下がっていきますよね、社会保障費(出費)は上がっていきますよね、労働者が減るのでGDPも上がる見込みは弱いですよね、となると借金(国債)が増えていきますよね。これ、どうします?

そこで色んなアイデアは出てくると思うんですよ。色んな切り口から問題点も指摘できるでしょう。でも、きちんとした回答に至るにはどこかで「数字」が必要なんですよね。人口はどれくらい変わるのか。税収入は?社会保障費は?国債残高は?GDPは?そういうのを考えるのが定量的な視点です。机上の空論を避けるために数字に基づいた議論をしなければいけないわけです。

私が「数字」の重要性を意識したきっかけは募金です。街頭募金ってあるじゃないですか。あれ、社会に良いイメージありますよね。でも、もし10人のボランティアスタッフが駅前で3時間、募金を集めて11,900円集めたらどうでしょう。これ、その時間にバイトして10人×3h×¥800=24,000円稼いだ方が良いんじゃないか…という考え方もできると思うんですよ。

もちろん、この考え方には異論反論の余地はありますが、その場合でもやっぱりどこかで数字に落とし込まなければいけないはずです。分野を問わず、何か問題を解決したいとき・しっかりと考えたいとには「数字」が必要になってきます。金融は、常に数字を意識しなければならない分野なので、定量的な視点を習得するには恰好の素材と言えるでしょう。



●論文

3年生なら三田論、4年生なら卒業論文、修士なら修論ですかね。それぞれゴールを持った上で、パートに分かれます。それで論文を書くわけなのですが、授業中に時々、教授から課題が投げかけられます。

経済指標・ニュースや輪読の最中に、教授が「いま現実社会でこういう問題があって、この人たちが頭を抱えている」と問題を提起します。そして「どうしたらいいか」と意見を募ることもあれば、「この分析をやってほしい」と投げかけます。


例えば、投資信託がなかなか売れない、という問題。消費者がお金を預けて、運用会社が成功すればその分、預けた人が儲かる仕組みです。消費者はリスク最小・リターン最高にしたい。運用会社は運用に失敗すれば損をする。その一方で、消費者に金融商品を売り込む中間業者は投資の成功失敗に関係なく手数料を獲得する、という構造になっています。

するとどうなるか。中間業者は投資の結果でダメージを受けないので質の悪い商品を売る可能性が出てくる(少なくとも消費者はそう思ってしまう)。では、どこをどう変えたら解決するか?

答えを考えるには、この3人の登場人物(消費者、運用会社、中間業者)それぞれが効用最大化となる行動を取る構造をミクロ経済学のモデルに落とし込みます。その上で、数式をどう変化させたら上手く回るのかを考えなければいけません。


こういう分析を唐突に投げかけられます。世の中の問題は山積みなので、次々に課題が提示されます。やればやるだけ勉強になるので、せっかくの大学生活なのだからしっかりと学習したい!という方には最高の環境ではないでしょうか〜。




大体こんな感じのことをやっております。

金融をテーマにして、常に「現実で何が起きているのか」「その原因は何なのか」「どうやって対処すれば良いのか」を考えさせられる研究会なのです。問題を分析・解決できる人間になる訓練が詰まっていますね。

他にも、経済学検定試験(ERE)や政策提言コンテスト(ISFJ)に参加して、チーム対抗戦みたいなことをやったり。教授が主催する国際会議にお邪魔させていただいたり。飲み会、バーベキュー、カラオケ、ソフトボール大会、テニス、レンタカーで遠出、誕生日パーティー、動物園などリア充っぽいことも。

ここに挙げたのは一例に過ぎません。どこのゼミにも言えることだと思いますが、自分たちの工夫次第でいくらでも面白いことができます。


続く。

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