2014/03/26

優秀な学生が入社直前で大手企業の内定を蹴るのは必然だという話。

私の周りだけかもしれませんが、昨年の春に大手企業に内定が決まった学生(の中でも、特に優秀な人たち)が、この春=入社前のタイミングで、次々と「実は内定を蹴りました〜」とカミングアウトしまくっております。

大したサンプル数があるわけではないので一概に言えないのですが、多くが「内定が決まった後に始めたアルバイト先の企業に引き抜かれる」「内定が決まった後に立ち上げた事業が上手くいきそうなので起業する」というパターンのようです。サンプルとしては、ややIT系が多めですが、政府系・金融系なども。

んで、採用した企業側はたまったもんじゃないでしょうけど、これって結構、必然的な帰結のように感じます。


というのも、まさに上記ケースの通りなのですが、採用が決まってから入社まで半年〜1年間近く待つことになるので、当然ながらその間、学生は別のことをするわけですよ。アルバイトなり、事業の手伝いなり、自分でサービスを立ち上げるなり。優秀な人ならそこそこ成果を挙げる可能性も高いので、アルバイト先から引き抜きの声を掛けられたり、本格的に打ち込むくらいやりがいを感じるわけです。

一方で、採用をした企業側でも、内定者をアルバイトとして雇ったり、先輩や内定者同士で飲み会を開いてもらったりといった工夫をしているところが多いのではないでしょうか。アルバイトに裁量を与えているベンチャー企業だと、入社前から大活躍する期待の新人…といった話もしばしば聞きます。

ただ、ほとんどの企業はお手伝い程度の業務しか任せないっぽいです。どちらかというと、企業に入社する前の心構え・マインドセットを整える儀式としての役割が強いように感じます。先輩のありがたいお話を聞いたり、自分が入ったらこういうことをやるんだなーとイメージさせる職場体験のような感じかなと。これもサンプル少ないので、違ったらごめんなさい。

上の2つのケース(内定先以外での活動 / 内定先での活動)をあえて両極端な二項対立として捉えると、内定先では「実際に携わることのできる業務」は控えめで、「1年後の入社に備えたマインドセット」が重視されています。逆に、他社でのアルバイトや事業の立ち上げでは、「マインドセット」をじっくり整える余裕はなく、「実際の業務」が100%となります。


図示するとこんな感じ。


内定先:入社時点でのマインドセット最大化 => 業務は入社3年くらいで100%参与できるように教育される。



内定先以外:最初の数ヶ月で業務が100% => 打ち込んでいるうちにマインドセットも最大化される。

結果として、長期的なキャリアプラン(「この会社に入って3年後にはこうなっていたい!」)よりも、短期的なモチベーション(「目の前の課題に今すぐ打ち込みたい!」)がまさって、内定先を蹴ることに繋がるわけです。

優秀な人を半年〜1年間も放置して、他に取られないわけがない、ということです。入社後のイメージを膨らませるだけの生産性のない時間を過ごすよりも、やりがいのある仕事に打ち込む方が楽しいだろうし、その優秀な人たちは、のんびりと入社を待っていないだけの行動力・実行力があるからこそ、優秀だと評価されるんじゃないかなーと。


なお、これが生じないのは、

・短期的なモチベーションよりも長期的なキャリアプランを優先し、なおかつ、そのキャリアプランは最初の内定先でのみ実現されるケース。
(ただし、不透明な時代でキャリアパスが計画通りにいかないだろうと予想する場合、長期的なキャリアプランを優先するインセンティブは弱い)

・興味分野、業務内容、人間関係、成果などの面で、業務に打ち込んでもマインドセットが最大化されなかったケース。試しにやってみたけど「やっぱ違うわ」的な。

・特定のスキルを身につける目的など、最初から短期間での参与を意図して、卒業後は最初の内定先に勤務するつもりでいるケース。

いずれにせよ学生側の都合に依るところが大きいので、採用側ではコントロールが難しい部分です。

そこで、人事が下手にキャリアプランを想起させる発言(「内定を蹴るか迷っているのなら、最初に入社しようと思ったときの気持ちを思い出してほしい」とか「3年後の自分を想像してほしい」とかの発言)をすると、もう最悪。

「あ、こいつ、分かってねーわ」と醒めた目で見られる可能性アリです。なぜなら、入社を前提にした(その学生には響かない)マインドセット押しを繰り返しているだけだからです。


また、仮にこの引き抜き条件が揃っても人材をキープ可能なのは、

・アルバイト先の企業=自社のケース。要するに、入社前の優秀な新人アルバイトに裁量を与えて大きな仕事を成功させ、どんどん打ち込んでもらいましょう、という話。

・事業立ち上げ=自社内の新規事業 or 子会社として積極的に支援するケース。自分でやるよりもリソースを活用できることに魅力を感じてもらいましょう、という話。

加えて、例外的には、内定を蹴ってでも好きなことをやれよ!と応援して、社員・学生が良い関係を築いておき、別の機会を見つけて再度誘うパターンもありそうです。ただ、これは何も解決にはなっていませんが。

制約条件を無視して理想を言えば、新入社員にどんどん裁量を与えたり、1人1事業を立ち上げちゃいなよ!会社がサポートするでよ!くらいのテンションだったら素晴らしいんじゃないでしょうか。いや、分からないですけど。


…ということを考えました。そもそもサンプルが私の周りのごく少数なので、偏った話かもしれませんが。いずれにせよ、新卒一括採用 => 半年〜1年後に入社という形式では必然的に、優秀な学生のうち一定数は内定先を蹴ることになるのだと思います。

おしまい。

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